TRNSYSで日射データを処理する

今回は実測データなど、時系列の日射データから日射の処理を行う例のご紹介です。

気象データについては、専用のデータリーダーが用意されています。それ以外で日射を扱う機会はあまり無いと思いますが、TRNSYSには日射処理専用のコンポーネントType16 Radiation Processorが用意されています。

このコンポーネントでは直散分離や方位別日射量などの計算が可能です。

Type16 Radiation Processor

Type16はPhysical Phenomena → Radiation Processorsフォルダに格納されています。利用できるデータや目的に合せて6種類が用意されています。

今回は例としてTotal Horiz Tmep and Humidity Known (Mode=2)を使用します。このコンポーネントは水平面全天日射、気温、相対湿度から処理を行います。

使い方

Type16で直散分離する前に実測データの読み込み処理が必要です。この処理はType9 Data Reader と組み合せて行います。

Type9,Type16の接続

使用するType16が要求する値を順につないでいきます。下の図ではRadiation on horizontal(全天日射量) がつながっていませんが、これは単位換算を間に挟んでいるためです。(後述)

後半のTime of last data read, Time of next data readも必須なので必ず接続してください。

その他

基本的にType9, Type16の組み合わせで使用しますが、単位換算などは途中でEquationで処理します。

この例では日射量の単位がW/m2だったため、kJ/hm2に換算しています

一応、換算式を載せておきますが、ごくごく単純な換算です。

それともう一つ、STARTDAYという値を計算していますが、これはType16がパラメータとして通し日の値を要求するため、それを計算しています。

Type16 / Shift in solar time

Type16で観測地点の真太陽時と標準時の差を考慮するための設定値です。以下のように計算した値を設定します。

  • shift in solar time: SHIFT = Lst – Lloc
  • Lst 子午線の経度
  • Lloc 観測地点の経度

日本標準時子午線は東経135°、東京(拡張アメダス1995, 地点番号363)を例にすると、

緯度: 35.69 deg、経度:139.76 ←観測地点の緯度経度、建設地ではない
shift in solar time: SHIFT = Lst - Lloc
Lst 日本標準時子午線 -135(東経-、西経+)
Lloc -139.76
= -135 - (-139.76)=4.76

これで4.76を入力としたいところですが、TRNSYSの日射量は直近の1hの積算値を要求します。ところが拡張AMeDAS1995の日射量は前後30分の積算値の値です。そのままでは0.5hのずれが出てしまいます。

そこで直近1hの値になるようにShift in solar timeを0.5h分調整します。

SHIFT = -135 (経度) + 7.5(0.5時間) ←直近1hとして補正
SHIFT = -135 - (-139.76) + 7.5
= -135 - (-139.76)+7.5 =12.26

出力

Type16は日射に関連した各種値の出力が可能です。この例では全天日射、直達、天空日射を出力しています。

サンプル

今回使用したTPFのダウンロードはリンク先より。

なお、サンプルに気象データは含まれていません。試される場合は別途気象データをご用意ください。Type99の拡張アメダス1995の東京(363)を元に、1行ダミーデータの追加したものを用意してください。

詳しくはTPF上のメモを参照してください。

まとめ

今回は水平面全天日射から直達、天空日射を出力しました。このコンポーネントでは方位別日射量の計算や、地表面反射率の考慮などの機能が用意されています。日射の実測データの各種処理に利用する事が可能です。

動作環境

以下の環境で動作を確認しています。

  • Windows11 Pro(64bit, 23H2)
  • TRNSYS18.06.0002(64bit)
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