TRNSYSで設定温度にならない
TRNSYS,TRNBuild/Type56では設定温度や時間帯を指定して暖冷房の条件を設定できます。
具体的にはHeating type, Cooling typeを使って、例えば8:00から18:00まで、設定温度21℃などの暖房条件を設定します。(使用する時間帯は下の図のようにSchedule typeで8:00から18:00の間、機器をONするスケジュールを使用します)
ところが、計算結果を見ると暖房の開始直後は設定した室温にならず、設定温度になるのは2時間後という結果が出力されることがあります。
下の図は暖房を8:00に開始している例ですが、設定温度になるのは2時間後の10:00という結果になっています。
チャートだとちょっと分りにくいので数値でまとめたのが下の表です。
8:00に暖房を開始するので、少なくとも9:00には21℃になって欲しいのですが不思議ですよね?なにか設定に問題があるのでしょか?
実は平均気温なのです
はじめに大事な前提を押さえておきます。この例では室温は次のように計算されています。
- Type56の出力値はタイムステップごとの平均値
- タイムステップは1h
室温を含め、TRNSYSの出力はタイムステップごとの平均値を出力しています。ついついその時刻の室温(瞬時値)のように思いがちですが、これはタイムステップの平均なのです。
ここで室温は1つ前のタイムステップの瞬時値と現在のタイムステップの瞬時値から計算されます。
平均温度から逆算して瞬時値をまとめたのが下の表です。
- T_End of Timestep:逆算したタイムステップ終わりの瞬時値
- ave temp:瞬時値から計算した平均温度
表から9:00(8769h)に暖房設定温度21℃になっています。これを前のステップ(8:00/8768h)の瞬時値と平均で出力するため、設定温度になっていないように見えるわけです。
9:00~10:00(8769h、8770h)はどちらも瞬時値で21℃で平均も21℃です。この時点でようやく暖房設定温度に達したように見えます。
ちょっと誤解を招きやすい出力ですが、通常1hステップは暖冷房負荷など年間の計算で使われます。負荷量で考えると特に違和感のない出力が得られます。
逆に、暖冷房による室温の変化を検討する場合は、より短いタイムステップで計算がおすすめです。
短いタイムステップで計算
下の図ではタイムステップ1hと0.125h(7.5min)の結果を比較しています。左が1h、右が0.125hの結果です。
スライダーを動かして比較すると、0.125hでは暖房が短いタイムステップで反映されています。これはエアコンを入れたあとの室温の変化に感覚的に近いですよね。
室温の変化や、それに伴う快適性の評価ではタイムステップを短くすると分かり易い結果が得られます。
このようにタイムステップは計算の目的に応じて適切な値に調整するのがおすすめです。
動作環境
以下の環境で動作を確認しています。
- Windows11 Pro(64bit, 23H2)
- TRNSYS18.05.0001(64bit)