建物モデルとシステムシミュレーション

TRNSYSは建物モデル(TRNBuild/Type56の温熱シミュレーション)や空調や給湯などのシステムシミュレーションが可能です。

建物のモデルとシステム系を組み合わせる事も可能で、建物の室内環境と空調システムを組み合わさせることも簡単です。

空調に限らず組み合わせる事もできますが、いかんせん慣れないとどう組み合わせたらいいのか悩ましいと事です。

建物モデルとシステム系の基本パターン

建物モデル(TRNBuild/Type56)には外部のコンポーネントのデータをやり取りする仕組が用意されています。この記事では建物モデルとシステム系を組み合わせたシミュレーションの基本パターンをご紹介します。

Ventilation Type

Ventilation typeはTRNBuildで換気(機械換気)を扱う設定項目です。換気量や給気温度、湿度の条件の設定が可能です。

基本的に建物モデルと空調システムとのやり取りは、このVentilation typeを使用します。

図は建物とヒートポンプとやり取りを行っている例です。(”C:\TRNSYS18\Examples\HVACTemplates\System2.tpf”)

  1. 建物モデルからは計算結果として室温(TAIR_LOWER1)、相対湿度(RELHUM_LOWER1)が出力され、その値をヒートポンプが室内側の条件として受け取っています。
  2. 次にヒートポンプで計算された吹出し口の温度(Outlet Air Temperature)、相対湿度(Outlet Air % Relative Humidity)が建物モデルへ引き渡されています。

建物モデルでは、Ventilation typeでこれらの値を受け取って室内へ給気の条件として扱います。

上の図と見比べると、受け取った値をInputとしてMVNT_LOWER1(風量)、TVNT_LOWER(吹出し口温度)、RHVNT_LOWER1(吹出し口の相対湿度)として処理しています。

Gain type

通常は室内の在室者や照明などの室内発生熱を扱う項目です。Gain typeもVentilation typeと同様に外部のシステムと組み合わせて使うことが出来ます。

図の例ではラジエーターと建物モデルを組み合わせています。(”C:\TRNSYS18\Tess Models\Examples\HVAC Library\Radiator\Type1231_v2a.tpf”)

  1. 建物モデルから計算結果として室温(TAIR_DINING)が出力され、その値をラジエーター(TESS HVAC Library, Type1231)が室内側の条件として受け取っています。
  2. 次にラジエーターで計算された発熱量(Heat Translation Rate)が建物モデルへ引き渡されています。

建物モデルでは受け取った値をGain typeで室内の発生熱として扱います。この例ではGain typeでは直接受け取らず、Zoneに割当てる際にScaleとして処理しています。(図のようにGain typeはラジエーターの放射、対流の割合として定義されています)

Zone側ではGain typeと一緒にScaleの項目でラジエーターの計算結果(発熱量)をQ_RADIATOR として受け取っています。これで発熱量がGain typeで定義された放射、対流成分へ割り振られて計算されます。

Gain typeは汎用性が高くて他にも次のような使い方があります。

  • 冷熱源(コンビニやスーパーの店内の開放型の冷蔵庫や食品陳列棚など)
  • 湿度の発生源(濡れた衣類や洗濯物、水槽、調理にともなって発生する湿度)
  • 顕熱容量(室内の家具や什器、倉庫内の荷物、図書館の書籍など蓄熱物)

最後の顕熱容量は、通常はZone/Capacitanceで扱う事ができます。外部のコンポーネント(TESS Loads and Structures Library, Type 963: Lumped Capacitanceなど)を使う利点としてはパラメトリックスタディや最適化で値で簡単に変更できる点ですね。

Surface Gain Inside/Outside

これは壁面の熱源を扱う仕組です。普通は壁面に熱源はないので、少々不思議に感じられるかも知れません。この仕組はPCM(潜熱蓄熱材)など、壁の一部で熱の吸放出を行う部材の計算に使用されます。

通常は壁面の熱流の計算結果と組み合わせて使用します。図はPCM(Transsolar No Standard, Type399 Construction Component with PCM and TAB)と建物モデルを組み合わせた例です。(”C:\TRNSYS18\Examples\Nostand\Type399\TYPE399_Example.tpf”)

  1. 建物モデルから計算結果としてStar node Temperature(TSTAR_BUEROPCM)と熱伝達率(HCONVO_S4)が出力され、その値をPCM(Type399)が条件として受け取っています。
  2. 次にType399の熱の吸放出が計算され壁表面の熱流(QSI1 – heat flux from wall to surface on side 1、QSI2 – heat flux from wall to surface on side 2)が建物モデルへ引き渡されています。

建物モデル側ではPCMが施工された壁面からの熱の吸放出としてSurface gain inside/outsideとして扱います。これでPCMによる室内環境への影響を考慮することができます。

まとめ

建物モデルとシステムシミュレーションの組み合わせの、比較的良く見るパターンをご紹介しました。Ventilation type, Gain type, そしてSurface Gain Inside/Outsideは外部のコンポーネントから値を受け取ることで、空調システムや特殊な部材を組み込んだ計算を可能としています。

ここでご紹介したコンポーネント以外も組み合わせて利用する事が可能です。標準コンポーネント、オプションコンポーネントともに多数の使用例が用意されています。利用される際には是非参考にしてください。

  • C:\TRNSYS18\Examples (標準コンポーネントのサンプル)
  • C:\TRNSYS18\Examples\Nostand (Transsolar No Standard オプションのサンプル)
  • C:\TRNSYS18\Tess Models\Examples (TESS Libraryのサンプル)

動作環境

以下の環境で動作を確認しています。

  • Windows11 Pro(64bit, 22H2)
  • TRNSYS18.05.0001(64bit)
  • TESS HVAC Library, Loads and Structures Library Library 18.0
  • Transsolar No Standard, Type 399 Phase Change Materials in Passive and Active Wall Constructions
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