建物のZoneや壁の熱収支バランス
建物モデルのシミュレーションで予想外の結果が出る。もしくは、実測と今ひとつ合わない場合など、原因を検討したい事がります。
Balance Outputs
建物のモデルでは設定条件が多岐に渡ります。どの条件が影響しているか特定するのも一仕事です。
こういった場合にZoneやSurface(壁や窓)単位で熱収支バランスを出力する機能が用意されています。
- BALANCE 1 – SOLAR BALANCE FOR ZONES (NTYPE 901)
- BALANCE 2 – SOLAR BALANCE FOR SUM OF ALL ZONES (NTYPE 902)
- BALANCE 3 – SOLAR BALANCE FOR EXTERNAL WINDOW (NTYPE 903)
- BALANCE 4 – SENSIBLE ENERGY BALANCE OF ZONES (NTYPE 904)
- BALANCE 5 – SENSIBLE ENERGY BALANCE: SUM OF ALL ZONES (NTYPE 905)
- BALANCE 6 – ENERGY BALANCE FOR SURFACES (NTYPE 906)
- BALANCE 7 – MOISTURE BALANCE FOR ZONES (NTYPE 907)
- BALANCE 8 – MOISTURE BALANCE FOR SUM OF ALL ZONES (NTYPE 908)
- BALANCE 9 – SUMMARY
Balance 4
いっぱい用意されていますが、ここではZoneの顕熱の収支バランスを出力するBlance 4をご紹介します。Blance 4の出力を設定するとZoneの熱の収支がEnergy_zone.BALファイルに直接出力されます。通常の出力項目はType56のOutputの項目になりますが、Blance出力は直接ファイルに出力されるのが特徴です。
Blance4の出力を設定する
- Output Mangerの画面で、balancesを選択する
- NtypeのリストからBAL_4を選択する
- 左矢印キーをクリックして、BAL_4を追加する
- Zoneを選択する
- 左矢印をクリックしてZoneを追加する
以上の設定で、計算を実行するとEnergy_zone.BALが出力されるようになります。
このファイルには熱の取得先(損失先)ごとに時系列の値が出力されます。以下、出力される値の概要です。(詳しくは、ドキュメントの「5.2.3.5.4. BALANCE 4 – SENSIBLE ENERGY BALANCE OF ZONES (NTYPE 904)」を参照)
B4_QBAL | 1つのZoneのエネルギーバランスは常に0に近い値。 |
B4_DQAIRdt | Zoneの内部エネルギーの変化(空気の顕熱容量+TRNBuildで追加される顕熱容量で計算) |
B4_QHEAT | 理想的な暖房(対流+放射)能力 |
B4_QCOOL | 理想な冷房能力 |
B4_QINF | 漏気による熱取得、損失熱 |
B4_QVENT | 換気による熱取得、損失 |
B4_QCOUP | Couplingによる熱取得、損失 |
B4_QTRANS | 躯体から室内表面への熱取得、損失 |
B4_QGINT | 室内発生熱(対流+放射) |
B4_QWGAIN | Zone内表面のユーザー定義の発生熱 |
B4_QSOL | Zoneのすべての内側表面の日射吸収による熱取得 |
B4_QSOLAIR | 外窓からの透過日射によるZoneの対流による熱取得 |
図はEnergy_zone.BALの抜粋です。このように項目別に時系列で出力されます。
この出力を調べることで日射からの熱取得が多いとか、壁からの影響が大きいなど(もしくは適切かなど)を検討することができます。
Python, Plotly でグラフ化してみた
とはいえ、Energy_zone.BALで時系列の数値を追いかけるのも正直大変です。そこでPythonとPlotlyを使ってグラフ化してみました。
やっぱりグラフにすると時系列で熱収支の変化が視覚的に確認できて分かり易いですね。
Balance 4 example
このスクリプトをEnergy_zone.BALと同じフォルダへ配置して実行すると、図のようなグラフが表示されます。
Energy_zone.BALにはすべてのZoneの熱収支が出力されています。図の例はEnergy_zone.BALにZoneが2つ含まれています。リストが表示されるので、番号を入力してください。(本当はZone名で指定できるといいのですが、Blance4の出力はZoneを番号で管理しています。このため、番号で指定してください。なお、この番号はTRNBuildの画面に表示される順番と同じです)
注:このスクリプトの実行にはPandas, Plotlyが必要です。予めこれらのパッケージをPython環境にインストールしてください。
動作環境
以下の環境で動作を確認しています。
- Windows11 Pro(64bit, 22H2)
- TRNSYS18.05.0001(64bit)
- Python 3.11.4
- Plotly 5.17.0
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TRNSYS、Type56、Balance Outputsのグラフを描く | 建築環境工学系日記