TRNSYSでPMVを計算する
建物の温熱環境の評価として使われる快適性指標。TRNSYSでは各種の快適性指標に対応しています。
TRNSYSの快適性指標
TRNSYS, TRNBuildでは、以下のような快適性指標の計算が行えます。
- MRT 平均放射温度
- OT 作用温度
- SET 標準有効温度
- PMV 予想平均温冷感申告
- PPD 予想不満足者率
この中から、比較的よく使われるPMVを例に設定方法を解説します。
PMVとは?
PMVは人間の感覚量から物理的考察に基づいて温熱快適性を表示したもので、1967年にデンマーク工科大学のオレ・ファンガー(英語版)によって提唱された。温冷感を決定する環境側の4要素(気温[℃]・湿度[%]・風速[m/s]・熱放射[℃])に、人体側の2要素(代謝当量(英語版)[met]・着衣量[clo])を加えて考慮する。PMVでは、PMV=0の状態を熱的中立とし、-3から3のあいだで人間の温熱快適性を表現する。なお、極端に過酷な環境下ではPMVは適応できない。
Wikipediaより引用
ということで、計算にはいくつか値が必要です。気温、湿度など通常、Type56が計算する値の他、風速、代謝量(met),着衣量(clo)の値が必要になります。
TRNBuildでは、これらの値をまとめてComfort typeで扱います。(つまりPMVを出力する場合、前提としてComfort typeの定義が必要になります)
次の順序で設定します。
- PMVの計算に必要なclo(着衣量)、met(代謝量)をComfort typeとして定義する
- PMVを計算するZone(Airnode)へComfort typeを割り当てる
- OutputsへPMV(PMV、Ntype124)を追加する
以下、TRNSYS18.1の設定例です。(TRNSYS17の設定例は後半を参照)
TRNSYS18の設定
Comfort typeを定義する
TRNBuildの画面で操作します。
- 「TRNBuild Navigator」で「Regime Types」の「Comfort types」を右クリック
- 表示されたメニューの「Add Comfort」をクリックする
名前の入力画面が表示されるので、分かりやすい名前を入力します(この例ではデフォルトのままです)
- Clo, Met, External work(活動量), Relative air velocity(風速)などの値を確認、必要に応じて値を変更する
- 「✔」ボタンをクリックして、画面を閉じる
※この画面でSET、PMVの計算方法として、ASHRAE Standard 55-2013 を指定することも可能です。認証制度によっては、この計算方法が指定されているケースがあります。
それぞれの値については、TRNSYSドキュメントの「5.2.6.5. Definition of Comfort Types」に参考値が記載されています。
以上で、Comfort typeの作成は終了です。次は、Zoneへ作成したComfort typeを割り当てます。
ZoneへComfort typeを割り当てる
PMVを計算するZoneへComfort typeを割り当てます。対象のZoneの設定画面を開いて、次にように設定します。
- 「Comfort type」のアイコンをクリック
- 表示された画面で、「+」ボタンをクリックしてComfort typeをZoneへ追加する
- リストから、先ほど作成したComfort typeを選択する
- 「✔」ボタンをクリックして画面を閉じる
PMVの計算に使用するMRT(Mean Radiant Temperature)の計算方法を指定する事も可能です。デフォルトでは「simple model」が選択されていますが、「detailed mode」では、窓際や壁際、部屋の中央などをGeoPositionを使って位置情報を指定した計算も可能です。
詳しくはこちら⇩
Outputの指定
Outputの設定画面で、PMVの出力を追加します。
- リストから計算対象のZoneを選択する
- 「←」ボタンをクリックして、Zoneを「Selected “Thermal Airnodes”」へ追加する
- 「comfort outputs」を選択する
- リストから「PMV」(NType 124)を選択する
- 「←」ボタンをクリックして出力を追加する
- 「PMV」をダブルクリックする
ここで、さらに設定画面が表示されます。つづいて次のように設定します。
- リストからComfort typeをクリックして選択する
- 「←」ボタンをクリックして、”Selected “Comfort Definitions””へ追加する
- 「✔」ボタンをクリックして画面を閉じる
以上で、設定は終了です。
Simulation Studioへ戻って、「Update building variable list」を実行すると、Outputsの項目にPMVの出力が追加されます。
あとはType65などでグラフへ出力して、計算結果を確認します。PPDの計算も同じ方法で追加できます。
これで快適性指標を使った室内環境の評価が可能になります。
動作環境
以下の環境で動作を確認しています。
Windows10 Pro(64bit, 1809)
TRNSYS18.01.0001
3件のピンバック
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