TRNSYS18 新機能概要(7)昼光シミュレーション,データファイル、出力項目
今回も昼光シミュレーションの続きで、計算用のデータファイルの生成の解説です。
4.2.3. データファイルの生成
DaySIMアプローチにより、各センサーポイントの昼光係数は、Radianceフォーマットの幾何形状および材料定義に基づいて前処理ステップで生成されます。この処理はTRNBuildの “Tools“メニューから “generate radiance files“を選択して行います。
Radianceファイルの生成には3つのオプションが用意されています。
1. Generate radiance input files (*rad) only:
このオプションは、他のアプリケーションで使用するためのRadianceのファイルを生成します。Radianceファイルは、Zoneの幾何形状と他のZoneによるセルフシェーディングを含む関連するすべてのシェーディングジオメトリから構成されます。
2. “classic” format of daylight coefficients for DAYSIM:
Radianceファイルを生成します。(オプション1を参照)DAYSIMの「gendc」が呼び出され、DAYSIMの”classic”アプローチに従って昼光係数が生成されます。データはゾーンごとに日射遮蔽あり、日射遮蔽なしの2つのファイルに保存されます。
3. “dds” format of daylight coefficients for DAYSIM:
Radianceファイルを生成します。DAYSIMの「gendc」が呼び出され、DAYSIMの”dds”アプローチに従って昼光係数が生成されます。データはゾーンごとに2つのファイルに保存されます。
次の情報がRadianceファイルの生成に必要になります。
• Weather station Latitude, Longitude, standard meridian, site elevation)
気象データの地点情報(緯度、経度、標準子午線、標高)
• Scene rotation angle
建物をTRNSYS3dでモデリングした際と異なる向きで計算する場合は角度を指定します。 方位角と同じ角度を使用していることを確認してください(Type56のInput 6:AAZM)
Additional properties
• grand reflectance
地面の状態は昼光の計算結果に大きな影響を与える可能性があります。ユーザーはTRNSYS3dで作成した地面にIDを割り当てることができます。地面の反射率はこれらのシェーディングサーフェースに適用されます。シェーディングIDが定義されていない場合、地面からの反射は反射率(grand reflectance)を使ってモデル化されます。
• shader reflectance
温熱計算のモデルのシェーディングサーフェース(Shading Object)には反射の値がありません。 しかし、昼光モデルでは、shader reflectance(反射率、デフォルト= 0)を考慮に入れることが可能です。 指定された値はすべてのシェーディングサーフェースに適用されます。
Radiance parameters
レイトレーシング(ray tracing, 光線追跡法)シミュレーションとその結果は、使用されるパラメーターに大きく依存します。 最も重要なパラメーターは、TRNBuildインターフェースに表示されています。
• ambient bounces (ab): アンビエントバウンド回数
これは、間接成分の計算(Indirect calculation)で使用される拡散反射回数の最大数です。0を指定すると間接成分の計算は行われません。 複雑なファサードを持たない一般的な部屋では、ab値は5で十分です。このパラメーターは計算時間を大幅に増やしますので注意して設定する必要があります。ベネシャンブラインドを含むファサードを持つ部屋を考慮する場合、光線が数回反射されて建物から出る可能性があるため、それ以上の大きな値を指定する必要があります。
• ambient divisions (ad): アンビエント分割数
アンビエント分割数は、間接入射光を決定するために各周囲点から半球に送られる初期サンプリング光線の数を設定します。 このパラメーターは、明るさの変化が大きいシーンの輝度分布が高い場合には大きくする必要があります。 間接照度のモンテカルロ法による計算誤差は、この数の平方根に反比例します。
• ambient super-samples (as): アンビエントスーパーサンプル数
分散の多い分割された半球内の領域をサンプリングするために使用される追加の光線の数。アンビエントスーパーサンプル数は、通常はアンビエント分割数(ad)の約1/2または1/4に設定する必要があります。 アンビエントスーパーサンプル数は、有意な変化を示すアンビエント分割数にのみ適用されます。
• ambient resolution (ar): アンビエント解像度
この数値は、補間に使用されるアンビエントの値の最大密度を決定します。アンビエント解像度で割ったシーンのサイズよりも近い間隔のサーフェスではエラーが増加し始めます。アンビエント解像度(ar)とアンビエント精度(aa)をシーンサイズと組み合わせると、正確に処理される最小のジオメトリフィーチャが得られます。(下記参照)
シミュレーション解像度 = (最大シーンサイズ x アンビエント精度) / アンビエント解像度
• ambient accuracy (aa): アンビエント精度
この値は間接照度補間の誤差にほぼ等しくなります。0が指定されると補間は補間処理は行われません。
デフォルトの設定は、DaySIMの推奨設定です。モデルの複雑さとサイズによっては、ファイル生成に数時間から数時間かかることがあります。このため作業中のチェックには、精度を抑えて生成時間を短縮するのが有効です。
ambient bounces アンビエントバウンド回数 | ambient divisions アンビエント分割数 | ambient samples アンビエントサンプル数 | ambient resolution アンビエント解像度 | ambient accuracy アンビエント精度 | |
Fast (for checking only) チェック用 | 3 | 32 | 32 | 300 | 0.2 |
Default 推奨値 | 5 | 1000 | 20 | 300 | 0.1 |
プロジェクトに合った適切なパラメーターを選択するための昼光の基礎を勉強することを強くお勧めします。Radianceパラメーターは、Buiファイル(.b18)に保存されます。必要に応じて変更することができます。
Resulting files
データファイルはすべてBuiファイルと同じフォルダの”daylight”フォルダに生成されます。下表は、ファイル拡張子の概要を示しています。
ファイル拡張子 | 内容 |
*.hea | DaySIMヘッダーファイル |
*.pts | センサー形状ファイル |
*.rad | 形状ファイル |
*.dc | Type56で使用される昼光率 |
*.cfg | Type56で使用される設定ファイル |
*.log | データファイルを生成した際のログファイル |
一般に、ゾーンごとに2種類の昼光モデルが自動的に生成されます。1つは、すべての日射遮蔽装置が使われていない非遮蔽状態(shd0)。もう1つは、すべての日射遮蔽装置が使われている遮蔽状態(shd1)です。ファイル名には以下の命名規則が使用されます。yyy_shdx_name.*
yyy – zoneの番号
shdx – shd0…日射遮蔽なし, shd1 遮蔽1
name – zoneの名前
4.2.5 昼光関連の出力項目
昼光関連の出力項目は、計算された屋外照度(NType 400 – 402)と標準出力ファイル(NType 435)があります。
標準的出力ファイルは、”Daylight”フォルダに拡張子(.ill)の選択されたゾーンに対して書き込まれます。 各センサーポイントの時間積分照度値が含まれています。 さらに、以下の一般的な昼光の基準値がシミュレーション期間全体で計算されます。
• Daylight Autonomy (DA), default: < 300 lux
• Continuous Daylight Autonomy (cDA), default: < 300 lux
• Useful Daylight Illuminance (UDI), default: 100 – 2000 lux
• Daylight factor (DF) for CIE overcast sky
昼光の基準値のしきい値は、ビルディング記述ファイルに格納され、必要に応じて編集することができます。一般に、これらの基準値は在室者のみ関連します。このためスケジュールが追加データとしてNTpyeに割り当てられます。スケジュールの値は0(オフ)または1(オン)でなければなりません。
と、これで昼光関係は終了。次は、快適性関係へとつづく。