TRNSYSの気象データリーダーを入れ替える
2019/07/18 TRNSYS18に合せて記載内容を更新しました。
TRNSYS3D(SketchUp)で建物を作成して、Simulation Studioへインポートしたプロジェクトでは、そのままだとデフォルトではTMYやTM2,TM3など海外でよく使われている気象データリーダーになっています。これを日本建築学会の拡張アメダス気象データに差し替える手順です。
以下の2段階で作業を行います。
- 気象データリーダーの接続状態の確認
- 拡張アメダス気象データ(拡張AMeDAS、EA気象データ)リーダー(Type99AMeDAS)の配置と接続
※図はすべてクリックで拡大表示されます。見にくい場合には拡大して御覧ください。
気象データリーダーの接続を確認する
TRNSYS3Dで作成したIDFを、「3D Building Project」でインポートすると下の図のようなプロジェクトが出来上がります。
はじめに気象データリーダーの接続先を確認します。気象データリーダーのアイコンを選択して右クリックから「Edit connections with…」を選んで接続しているコンポーネントを確認します。
Wizard Settings, Radiation Unit Converter, Building, T_plotterの4つに接続していることが解ります。拡張アメダス気象データリーダーへ入れ替えた後、この4つのコンポーネントと同じように接続します。
まずは、現在の接続がどうなっているか確認します。
Wizard Settings
気象データリーダーからWizard Settingsへの接続を確認すると、Wind direction(風向)を接続している事が分かります。拡張アメダスの気象データリーダーへ入れ替えた後も、これと同じように接続します。
Radiation Unit Converter
詳細は省きますが、方位別日射量をプロットするのに多くの項目がつながれています。
ここで計算に必要なのはSolar azimuth angleの値だけです。最低限、この値だけ繋げばOKです。
Building
これは接続が少なめですが拡張アメダスにはない項目もあります。これについては対応方法を後述します。
T_plotter
プロット用にDry bulb temperature(気温)をつないでます。
接続状態が確認できたら、既存の気象データリーダーは不要なので削除しておきます。
拡張アメダス気象データリーダーの配置と接続
拡張アメダス気象データリーダー(Type99-AMeDAS)を配置します。
拡張アメダスのデータファイルや地点の設定をしたら、あとは順番に Wizard Settings, Radiation Unit Converter, Building, T_plotter へ接続します。
Type99-AMeDAS→ Wizard Settings
既存の気象データリーダーと同じようにWind direction(風向)を接続します。
Type99-AMeDAS→ Radiation Unit Converter
これは、Solar azimuth angleを接続すればOKです。
Radiation Unit Converter は、そのままだと後の処理でエラーの原因になります。使用している設定だけを残して、削除しておきます。
Type99-AMeDAS → Building
前の状態に合わせてつないで行きますが、TSKY(天空温度), GRDREF(地表面の反射率)の2箇所はつなぐ相手がありません。(矢印の項目)
この2つについては拡張アメダス気象データからは直接取得できないので、他の方法で値を取得します。
TSKY
TSKYはType69bで計算する事が出来ます。このコンポーネントを配置して、Buildingへ接続します。
Type69b → Building
まず、Type69bを画面上に配置してBuildingへ接続します。
ここはFictive sky temperatureからTSKYへ接続します。
ここでType69bのInputの項目を確認すると、Ambient temperature(気温)やDew point temperature(露点温度)などの値が必要な事が分かります。
Type99-AMeDAS → Type69b
Type69bで必要な値のいくつかはType99-AMeDAS(拡張アメダス気象データリーダー)から取得できます。Type69bとつないで必要なデータを接続します。
さて、最後にDew point temperature(露点温度)だけ残ってしまいました。露点温度は別のコンポーネント、Type33cを使って計算します。
Type33c → Type69b
Type33cを使って露点温度を計算します。画面上にType33cを配置して、Type69bを接続して、値をつないでいきます。
Dew point temperature(露点温度)を接続します。これでType69bの接続は完了です。
さて、今度はType33cですが、こちらは計算にDry bulb temp(気温)やAbsolute humidity ratio(絶対湿度)を必要とします。これらについては拡張アメダスから取得できるのでType99-AMeDASと接続します。
逆順につないでいったので、少々分かりにくかったかも知れません。下の図は関連する部分を抜き出した物です。このようにTSKY(天空温度)を計算するために複数のコンポーネントを組み合わせています。
GRDREF
あと残るのはGRDREF(地表面の反射率)ですが、これは計算できないのでBuilding側で初期値として適当な値を入れておきます。ここでは0.2としていますが、地表面の状態に応じて適当な値を設定してください。例えば、積雪状態であれば反射率を大きくします。
Type99-AMeDAS → T_Plotter
最後は、T_Plotterdですが、ここは外気温をプロットしているだけなので Ambient temperatureを接続します。
最終的に以下の図のような接続になっていたら完成です。
コンポーネントオーダーを変更する【重要】
コンポーネントを入れ変えると、コンポーネントの計算の順番が変わります。気象データリーダーのように通常は最初に処理されるコンポーネントを後から追加すると、うまく計算が流れないケースがあります。
コンポーネントの入れ替えが終わったら、最後にコンポーネントの処理順を次の手順で変更してください。
- Settings(歯車)のアイコンをクリックする。
- 「Settings」の画面で「Component Order」タブをクリックして表示する。
- 「Optimize component order」をクリックする。(これで処理順が変更されます)
以上で入れ替えは終了です。 入れ替えが上手く出来ていれば、計算が流れるはずです。駄目だったら、頑張って接続を見直し&修正してください。
おまけ
気象データリーダーを入れ替えた後、コンポーネントの処理順に問題があると図のようなエラーメッセージが表示されます。忘れずにコンポーネントオーダーを変更してください。
*** Fatal Error at time : 1.000000
.lstファイルより抜粋
Generated by Unit : 56
Generated by Type : 56
Message : The GetRadiationData routine has been called before the GlobalRadiationData array has been allocated.
動作環境
以下の環境で動作を確認しています。
Windows10 Pro(64bit, 1809)
TRNSYS18.01.0001