TRNSYS使いへの道 エラー対策その2 TRNBuild編
前回TRNSYS/Simulation Studioのエラー対策を書いてから、ずいぶんと間が空いてますが、続編です。今回はTRNBuild編です。
TRNSYSではTRNBuildで建物のモデルを作成します。このツールで入力中にエラーが発生することは稀です。(というか、普通は発生しないです。)
Error creating the wall transfer function coefficients:
このエラーが発生するのはファイルの保存時です。良くお目にかかるのが以下のようなエラーメッセージのダイアログ。
Error creating the wall transfer function coefficients:
Unable to find a root after indication that a root exits.
Maybe the timebase is too small.
Please, check the INF-file for further information.
慣れないと、ちょっとビックリします。
TRNBuildはファイルの保存と同時に裏でTRNSYSの計算に必要なファイルを作成しています。そのファイルを生成する際に、入力されたデータに問題があるとファイル生成でエラーとして報告されます。
もうちょっと具体的には、伝達関数が上手く計算できないためエラーを生じています。
これは熱伝導率が高く厚みが薄い材料では材料内を伝わる熱移動が非常に早すぎて,熱移動の時間遅れを表す応答係数を計算出来ないためのようです。
ありがちなのは折板屋根のように非常に薄い金属が含まれているケースです。こういう場合、熱容量を気にする必要はあまりないので、熱抵抗(Massless layer)として入力すると計算できるようになります。木造住宅などでも断熱性能の低い(無断熱)の壁も同様にエラーになるケースがあります。せっこうボードなどが原因になる傾向があるので、これもMassless Layerにするのがおすすめです。
エラー発生箇所を特定する
とは、いえWALLを一気に登録してしまうと、いったいどのWALLが原因なのか特定するのが難しくなります。
2012/9/18追記
TRNSYS17.1からはエラーメッセージに原因になっているWall Typeの名前が表示されるようになりました。
ということで、17.1以降を使っている場合は以下は必要無いです。エラーに表示されたWall typeで使われているLayerをMaterial layerからMassless layerへ変更してお試し下さい。
そんな時に参考になるのが”INF-file”。
エラーメッセージ最後の行でも「Please, check the INF-file for further information.」とお願いされているので、エディタで開いてみます。編集中のBuiファイル(*.b17)と同じ名前で拡張子が*.infのファイルがそれです。
以下、ファイルの最後のところだけ抜粋したものです。ここにエラーメッセージの表示と同じものが書き出されています。
***** WALL TRANSFERFUNCTION CALCULATIONS *****
———- WALL TYPE EXT_WALL ———-
THERMAL CONDUCTANCE, U= 44.29851 kJ/h m2K; U-Wert= 3.97983 W/m2K
(incl. alpha_i=7.7 W/m^2 K and alpha_o=25 W/m^2 K)
TRANSFERFUNCTION COEFFICIENTS
K A B C D
0 9.5561828E+02 7.8164738E-02 5.4868756E+01 1.0000000E+00
1 -1.6035231E+03 2.1907456E+00 -6.3497617E+01 -1.0921604E+00
2 7.3084335E+02 2.9183426E+00 1.4814676E+01 2.2241025E-01
3 -7.8305759E+01 3.9378281E-01 -6.0752051E-01 -4.1813636E-03
4 9.5233107E-01 3.6991695E-03 6.4438896E-03 2.0465039E-06
5 -3.4890872E-04 9.3794026E-07 -3.0118358E-06
SUM 5.5847359E+00 5.5847359E+00 5.5847359E+00 1.2607052E-01
UNABLE TO FIND A ROOT AFTER INDICATION THAT A ROOT EXISTED
CHECK THE WALL TYPE AFTER THE LAST CALCULATED WALL
OFTEN THE WALL CAPACITY IS TO SMALL TO CALCULATE A TRANSFER FUNCTION !
CHECK ALSO YOUR TIMEBASE !
ここだけ見ると、どうもWALL TYPE EXT_WALLの計算でエラーが発生しているように見えます。このメッセージ紛らわしいんですが EXT_WALLまでは処理が終わってます。実は実際にエラーになっているのは、EXT_WALLの次のWALL TYPEなんです。←ここ大事。試験に出るよー。
じゃあ、どの材料が原因か確認するにはBuiファイル(*.b17)の方を調べる必要があります。
で、*.b17をエディタで開くと以下のような箇所が見つかります。
*—————————————–
* W a l l s
*—————————————-
WALL BND_WALL
LAYERS = PLASTERBOA FBRGLS_ASHRAE PLASTERBOA
THICKNESS= 0.012 0.066 0.012
ABS-FRONT= 0.6 : ABS-BACK= 0.6
EPS-FRONT= 0.9 : EPS-BACK= 0.9
HFRONT = 11 : HBACK= 11
WALL EXT_WALL ←.INFで最後に書き出されていたWALL TYPE。これが原因に一見見える。
LAYERS = WD_SIDN_ASHRA 鋼材
THICKNESS= 0.009 0.9
ABS-FRONT= 0.6 : ABS-BACK= 0.6
EPS-FRONT= 0.9 : EPS-BACK= 0.9
HFRONT = 11 : HBACK= 64
WALL EXT_ROOF ←でもホントの原因は、こっちのWALL TYPE。
LAYERS = 鋼材 ←そしてこれが、そもそもの原因と思われる材料。
THICKNESS= 0.001
ABS-FRONT= 0.6 : ABS-BACK= 0.6
EPS-FRONT= 0.9 : EPS-BACK= 0.9
HFRONT = 11 : HBACK= 64
WALL EXT_FLOOR
LAYERS = TMBR_FLR_ASHR INS_FLR_ASH
THICKNESS= 0.03 0
ABS-FRONT= 0.6 : ABS-BACK= 0.6
EPS-FRONT= 0.9 : EPS-BACK= 0.9
HFRONT = 11 : HBACK= 11
これで原因が特定できたので、あとはその部分をTRNBuildでMassless layerで差し替えてあげればOKです。
ちなみに、上記のように.INFファイルに手掛かりになるWALL TYPEが書き出されていないケースもあります。その場合は、WALL TYPEの最初でエラーになっています。つまり上の例だとBND_WALLに問題があるということですね。
てな、感じでエラーも理由が分かれば怖いことなし。がんばって建物を入力しましょう。
1件のピンバック
タイムステップを短くすると室温が階段状に変化する(TRNSYS-USERSより) | 建築環境工学系日記