TRNSYS使いへの道 Type56/Input
TRNSYS/Type56を使って多数室モデルのシミュレーションを行う場合に便利な機能の一つにInputの仕組みがあります。ちょっと複雑な計算を行う場合には欠かせない機能なのですが、慣れないうちは何のためについているのか、少々分かりにくい機能でもあります。実際、よく質問を頂きます。
TRNBuildの設定
日射遮蔽は、例えば開口部にルーバーが付いているのを計算しようとすると、TRNSYSでは以下のように設定します。※
※2019/07/23追記
TRNSYS17, 18ではルーバーや庇、隣棟などの日射遮蔽物はTRNSYS3D/Shading Objectで扱います。External shad. factorを利用するケースは減りましたが、簡単に日射遮蔽の効果を検討したい場合や、特殊な条件を設定する場合には便利な項目です。
開口部を選んで、External shad. factorの項目に遮蔽率の値を入力します。このページの写真(青い窓)のように、完全に閉じている窓では External shad. factor は 1 、なにも遮蔽がなければ 0 です。
簡単ですね。じゃ、次に同じ項目を使ってルーバーを庇に変更してみます。庇の場合は庇の出によって日射の遮られかたが時刻によって変わってきます。固定値では困るので、こういう時はInputの出番です。External shad. factorの項目を選んで、今度は値として入力値(Input)を選択ます。ここではドロップダウンリストから「<– new」を選んで新規にInputを作成しEX_SHADEという名前を付けます。
Type34の配置と設定
次に、Simulation Studioで庇の遮蔽率を計算するType34という便利なコンポーネントを配置します。
気象データリーダーの設定
Type34はInputとして開口部を含む壁面への直達日射と入射角を必要とします。それに合わせてType99-AMeDASで傾斜面日射量の設定をしておきます。
この例では南面の開口なので、Type99-AMeDASのInputの項目で鉛直面(Slope of surface 90), 方位は南(Azimuth of surface 0.0)と設定しておきます。
Type99-AMeDASとType34の接続
Type99-AMeDASからの接続は図のように太陽の天頂角(Solar zenith angle)や方位角(Solar azimuth angle)などを接続します。
Type34で庇の出を設定
Type34では庇の形状に合わせてパラメータを設定します。ここでは水平庇(Overhang)を選んで1mに設定しています。その他、庇の影響を受ける窓自身の 高さ(Receiver height) と幅(Receiver width)、位置関係も指定する点に注意して設定して下さい。
Type34とType56の接続
設定が終わったらType34の計算結果をType56につなぎます。Type34のFraction of solar shadingからType56のEX_SHADEへ接続します。
これで完成です。データの流れと説明が逆順になってしまいましたが、流れを整理すと、
Type34(庇) で日射の遮蔽率を計算
↓
Type56では遮蔽率をEX_SHADEという名前で受け取って窓の計算で利用する。
というような流れで計算が行われます。
使い方のヒント
キャノピーのような日射を透過する遮蔽物の場合は、Inputで係数を使って External shad. factor を調整します。例えば、キャノピーの日射の透過率が80%であれば、実際に遮蔽される日射は20%です。係数を0.2として図のように設定します。
その他、時間で条件の変わる遮蔽物を扱う場合にも使えそうです。時間で遮蔽率の変わる可動型の遮蔽などにも応用できそうです。
動作環境
以下の環境で動作を確認しています。
Windows10 Pro(64bit, 1803)
TRNSYS18.01.0001(64bit)
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庇の長さを最適化 | 建築環境工学系日記