TRNFlowのエラーと対策2

以前に投稿したTRNFlowの記事の続きです。

換気計算のファイル

TRNFlowオプションを使って計算を行うと、換気計算用のファイルが書き出されます。

ファイル名はBuiファイル(*.b18,*.b17)と同じ名前で、拡張子は次のとおりです。

拡張子内容
*.cif換気回路の計算に使用されるファイル。計算実行時に自動的に作成されます。
*.cer計算実行時のログファイル。エラーやワーニングメッセージが書き出されます。

.CIFファイル

TRNBuildで設定した換気回路の設定条件に基づいて出力される計算用のファイルです。

通常は直接参照することはありませんが、後述するようにエラーが発生した際には参考になるデータです。

.CERファイル

TRNFlowの計算実行中のメッセージが書き出されます。

ワーニングやエラー、発生したタイムステップ、計算中のログがすべて書き出されます。TRNFLowの計算で何かエラーやクラッシュが発生した場合には、メモ帳などエディタで開いてメッセージを確認して下さい。

※エクスプローラーではファイルの種類として「セキュリティ証明書」と表示されます。これはたまたま拡張子がWindowsのセキュリティ証明書と同じためです。ダブルクリックでは開けないので、メモ帳を先に起動してから開いてください。

以下、.CERに出力されるワーニング、エラーメッセージの例と対策です。

ワーニングメッセージ

Linkの高さが異なる

 ***** WARNING ***** UNIT  7 TYPE 56, TIME =   0.000E+00
 COMIS MESSAGE  ***** NOTE *****    
 &-NET-LINks:  LinkID=L1  Type=DS_001  FROM(zone KITCHEN)=0.5   m  TO(zone
 AN_001)=0.m  deltaH=-0.5m.  ZoneHeight+LinkHeight is different for sides FROM
 & TO, like a vertical shaft.  Is this OK ?

この例では、高さ情報が異なるLinkがあるため、Warning(警告)メッセージが書き出されています。

タイムステップ(TIME = 0.000E+00)を見ると、計算開始直後に発生していることが分ります。

通常LinkはFrom、To Node間で同じ高さを設定します。

これが意図的に高さを変えた設定なのか警告メッセージが出力されます。 Straight Duct のように意図的な場合は問題ありません。それ以外のFanCrackLarge Opening横方向のStraight Ductなどでは同じ高さに設定して下さい。

この例では、KITCHEN、AN_001のLinkで高さ情報が異なっていることが指摘されています。設定を確認して、高さを修正します。

このワーニングが出ている場合、うっかり高さを間違えているケースが殆どです。致命的なエラーではないため計算は継続されますが、計算結果への影響を考えると修正するのがお勧めです。

補足 : 高さの指定

Zoneには地表面からの高さ(Reference height)が定義されています。AirlinkのFrom/To Nodeの高さ(height to of link rel. to “From—Node”, 及び”To-Node”)は、このReference heightからの高さを指定します。

図は、外気と2階部分のlinkの例です。この例では外気側は地盤面からの高さを、室内側はReference heightからの高さ(この例では床面からの高さ)を指定します。室内側は地盤面からの高さではない点に注意して下さい。

From,To の高さ
室内側はZoneのReference heightからの高さ
TRNBuildの設定画面
TRNBuildの設定画面

エラーメッセージ

換気回路が行き止まり

***** WARNING ***** UNIT  7 TYPE 56, TIME =   1.000E-01
 COMIS MESSAGE  ***** ERROR *****   
 Flow matrix is singular ! This might be caused by a zone that has no
 ventilation at all in this condition.
 Age of air and air change efficiency output is invalid !

換気回路のNodeは少なくとも2つ以上のLinkで他のNodeとつながっている必要があります。単独のLinkのみのNodeでは回路が行き止まりになるためエラーが発生します。

2つ以上のLinkがある場合でも、換気の向きによっては計算が成り立たないケースがあります。例えば、ある nodeへ2系統のファンから給気が行われているようなケースでは、排気の逃げ場がないため計算が成り立ちません。

その他、小さすぎるCrackや気密性の高いドアがすべて閉じられているなど、実質的に換気が発生しない換気回路では同様のエラーが発生することがあります。

いずれの場合も、ある程度換気が流れる条件を検討してください。

特定のThermal node(Zone)で問題が発生している

特定のThermal nodeでエラーが発生している場合、具体的なZoneがZONE Noとしてエラーメッセージに書き出されます。何らかの設定上の問題、もしくは他のNodeとのLINKに問題があります。

***** WARNING ***** UNIT  8 TYPE 56, TIME =   5.290E+02
 COMIS MESSAGE  ***** ERROR *****   
 Error in the ventilation part!  MATRIX SINGULAR FOR ZONE 3
  
  VENTILATION NETWORK SOLVER REPORTS ERROR

エラーの発生したタイムステップ(TIME = 5.290E+02)を見ると、529hで発生しています。ある程度計算が進んだ段階で起きていることがわかります。エラーの原因として、このタイミングで何か換気条件が変わった可能性があります。(例えば、開口を閉めるとか、ファンのOn/Offが変わったとか)

ZONE ”No”はTRNFlowが内部的に換気回路の計算に使用するCOMIS形式※のZONEの番号です。.cifファイルを参照してZONEを特定します。

COMIS: TRNFlowが換気計算に使用している換気回路網のプログラム

.cifでは「&-NET-ZONes」という行以降にZONEが定義されています。上記のERRORに表示されるZONEの番号が、この部分の定義の登場順に相当します。


&-NET-ZONes                                                          
  ___________________________________________________________________
 |Zone| Name         | Temp |Ref.   |   Volume    | Humid.| Schedule 
 | ID |              |      | Height|   [m3]      |       |  Name    
 |    |              |      |       |   H/D/W     |       |          
 |    |              |      |       |             |       |          
 | (-)| [-]          |[temp]| [m]   |   [m/m/m]   |[humi] |  [-]     
 |____|______________|______|_______|_____________|_______|__________
 
DINING          DINING          d      0. 3./4./28.125 d      d    
KITCHEN         KITCHEN         d      0. 3./4./14.0625 d      d   
STORAGE         STORAGE         d      0. 3./4./14.0625 d      d   
 AN_001          AN_001          d      0. 0.01         d      d     
 AN_006          AN_006          d      0. 0.01         d     
 AN_005          AN_005          d      0. 0.01         d   

この例では、上から3番目のZone,「STORAGE」がエラーの発生箇所です。

ただ、最終的にこのZoneがエラーメッセージに表示されているだけで、問題は別の場所にある可能性もあります。エラーが改善しない場合は、換気回路条の他の設定に問題が無いかも検討を行って下さい。

2022/01/24追記 ZONEの番号の例外

通常のTRNBuildで設定した条件に関連するエラーメッセージの場合は、TRNBuild Navigator の並び順です。例えば、次のエラーは coupling air flow に関するエラーですが、ZONE1、2はTRNBuild Navigatorの並び順の1,2、つまりDINING、KITCHENで発生しています。

ところでこのエラー、TRNFlowの計算ではcoupling air flowの設定は無視されて0になるという警告です。TRNFlowの計算とTRNBuildの換気設定は両立しないため不整合の警告です。計算は行われますが、結果的に「条件」としてTRNBuildで設定した室間換気は無視されます。対策としてはTRNFlowでも室間換気の換気回路を設定してください。

 ***** ERROR ***** TRNSYS ERROR
 UNIT 56 TYPE 56 MULTIZONE BUILDING
 THERE IS A WALL WITH COUPLING IN ZONE 1 ADJACENT TO ZONE 2
 BUT NO LINK BETWEEN THESE TWO ZONES IN THE COMIS MODEL.
 COUPLING CALCULATED BY COMIS WILL BE ZERO ! .

動作環境

以下の環境で動作を確認しています。
Windows10 Pro(64bit, 2004)
TRNSYS18.02.0002(64bit)

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